モジュール状の特定無線設備の技術基準適合証明制度上の取扱に関するガイドラインの解説

目次

今まではルール化がなかったモジュール状の無線設備

以前より、一部の無線設備は、容易に開けられないようにという状態でなければ、技術基準適合証明が受けられないことになっていましたが、モジュール状になった特定無線設備が技術基準適合証明を受けるようになってから、多くのモジュール状の特定無線設備が登場するようになりました。

その前までの(無線)モジュールというのは、あくまで部品であり、そのままでは技術基準適合証明が受けた事例がなかく、この実例を作ったのは、現在のテレコムエンジニアリングセンターと記憶しています。

法的なルールが存在していなかったため、はんだ付けであれば「容易に開けられない」ということで認可したのではないかと思われます。うやむやな状態で何十年も経ち、明文化しようという動きが出ており、ICCJ 電波法関連ガイドラインのワーキンググループがその内容をまとめていますので、ユーザー側に関係のありそうな部分のみ掻い摘んで紹介します。

この文書は、下記URLにありますので、興味のある方はご覧ください。

050606.pdf (soumu.go.jp)

「モジュール状の特定無線設備」とは

モジュール状の特定無線設備の定義は、次の通りです。

本ガイドラインにおける「モジュール状の特定無線設備」とは、無線設備を構成する送
受信装置において、電波の特性に直接影響を与える「発振部」、「変復調部」、「増幅部」及
び「無線制御部」(以下「主たる送受信装置」という。)が、筐体、基板ユニット又は集積回路
に組み込まれた状態で構成されており、「主たる送受信装置」に付加する装置である「表示部」、
「操作部」及び「電源部」(以下「付加装置」という。)の全部又は一部が、構造的に「主たる
送受信装置」と分離されており、「主たる送受信装置」、「送受信空中線系」及び「付加装置」
から構成される設備をいう。
(「モジュール状の特定無線設備」の技術基準適合証明制度上の取扱に関するガイドラインより引用)

以上より、モジュール状の特定無線設備とは、次のような形態であることが分かります。

  • 「発振部」「変復調部」「増幅部(パワーアンプ)」「無線制御部」といった「主たる送受信装置」が同一の筐体・基板・LSIに組み込まれている。
  • 「表示部」「操作部」及び「電源部」などの「付加装置」の全部又は一部が、構造的に「主たる送受信装置」と分離されている。
  • 総合的には、「主たる送受信装置」、「送受信空中線系」及び「付加装置」から構成される設備である。

特定無線設備では、「表示部」「操作部」及び「電源部」などの「付加装置」の全部又は一部が、構造的に「主たる送受信装置」と分離してもよいことになっているケースが殆どなので、これらに関してはモジュールに入っていなくてもOKと言えます(これは今まで通り)。

「送受信空中線系(アンテナ)」は、カテゴリーによっては、外れてはいけないルールの物がありますので、「送受信空中線系」に関しては、アンテナが外れていいものもあれば、モジュールに一体化されている物も存在することになります。

「無線制御部」は、定義が書かれていないので、現時点では不明です。

DSPなどで直接電波を発振させている場合は、DSPはモジュール内に納めなければなりませんが、それを制御するためのマイコンは外付けでOKです。電波の質云々ということから、外部からDSPのクロックを供給するのはご法度です。

ちなみに、LSIでWi-FiやBluetoothなどの回路が構成された物が存在するので、LSIを「モジュール状」と言えなくもないですが、今の所、LSIで技術基準適合証明を取得した事例はないようです。
LSIの状態で技術基準適合証明が取得できるのであれば、セットメーカーとしては使い勝手はいいですよね。

「モジュール状の特定無線設備」の構造要件について

「モジュール状の特定無線設備」の構造要件についての判断は、各認証機関に委ねられていましたが、次のように明文化されています。

2.1 「一の筐体に収められており」とは、無線設備の全てが一つの筐体に収納されていること。
なお、単に「筐体」と規定されている場合は、無線設備の全てが一つの筐体に収納されて
いることを求めていないと解する。

2.2 「容易に開けることができないこと」とは、特別な工具等を使用しない限り、電波の特性
に影響を与える装置や部品等にアクセスできないような構造を有していることと解し、具
体的には次のとおりである。
(1) 構造要件で筐体について規定があるもの(注 3)について、筐体の構造を例示すると次の
とおり。
注 3: 表1の注 1.~7.が該当する。
① 筐体が外殻ケースの場合
ア.ネジ止めの場合は、特別な工具等を使用しない限り開閉できないネジが使用さ
れているもの。
イ.接着の場合は、筐体そのものを壊さない限り開けることができないもの。
ウ.筐体がプラスチック等の「ツメ」等で固定している場合は、特殊な工具を使用
しなければ外せない構造となっているもの。
② 筐体が外殻ケース以外の場合
基板上に配置する半田付シールドケースや樹脂モールド等により電波の特性に影
響を与える部品等にアクセスできないもの。
(2) 構造要件で筐体について規定がないが、特定の装置について容易に開けることがで
きないことと規定があるもの(注 4)について、特定の装置の構造を例示すると次のとお
り。
注 4: 表1の注 8 が該当する。
① 特定の装置の構造が 2.2(1)に該当するもの。
② 特定の装置の部品が、表面実装技術で構成された基板であって、改造が容易でな
いと認められるもの
(「モジュール状の特定無線設備」の技術基準適合証明制度上の取扱に関するガイドラインより引用)

2.1に関しては、今まで通りなので、特に解説する必要はないでしょう。カテゴリーによっては無線設備の全てが一つの筐体に収納されていなくてもよしとしているものもあり、それに関しては今回の「モジュール状~」のルールの適用外とのことです。

2.2の「容易に開けることができないこと」は、今まで明文化されていなかった事項で、認証する現場もさぞかし困っていたことでしょう。通常であれば、「前例がないから」と断られてしまいそうなのですが、新しい実例を作るため、認証機関や初めにモジュール化の特定無線設備を販売したメーカー(アイコムだったでしょうか)が相当尽力されたのではないかと推測しています。

とどのつまり、モジュール状でも、壊す位しないと開けられない状態であればOKということです。

主たる送受信装置と付加装置との接続の方法

主たる送受信装置と付加装置との接続の方法に関しては、次の通りです。

(1) 分離型のモジュール状の特定無線設備は、汎用なインターフェースを介して接続さ
れること。
(2) 基板装着型のモジュール状の特定無線設備は、ハンダ付け、ケーブル接続、プラグ
インコネクター接続又は IC ソケットタイプ等で接続されること。
(「モジュール状の特定無線設備」の技術基準適合証明制度上の取扱に関するガイドラインより引用)

分離型というのは、PCカードやドングルを想定しています。ドングルなどの無線設備も「モジュール状~」に見なされるということなのでしょう。

基板装着型というのは、部品としてのモジュールということを意味します。基板に装着されるので、考えられる取付方法ならばよしということになります。

部品としての無線モジュールは、設計を容易にしてくれ、検証機関を短くしてくれます。有用なモジュールを使って、開発期間を短縮されるといいですね。

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