この記事を書いた人(きのぴぃ)
部品メーカー広告宣伝記事・電気系の雑誌や無線雑誌の元ライターをやってました。
以前よりガジェット集めをやっており、本業(電子機器メーカー勤務)の知見を活かしたレビューが得意です。
(詳しくはこちら)
その昔、イヤホンはとても音楽が聴けたものではなかったのだが、ハイエンドのイヤホンが登場するようになり、イヤホンでも音楽がまともに聴けるのだということが認識された。
イヤホンも日々進化しており、古くから使用されていたダイナミック型だけでなく、バランスドアーマチュア(以下BA)型や静電型などなど様々なドライバーが搭載されるようになり、独特なサウンドを楽しめるようになった。
BAドライバーは、出始めは高価だったためハイエンドモデルにしか使われなかったが、中国で格安なBAドライバーが作れるようになったため、急速に安価なモデルが登場することとなる。
繰り返しになるが、イヤホンはまともに音楽が聴けなかったのだが、今時のアンダー4000円クラスのイヤホンもかなり音質が進化しているという。
イヤホンニキである「凛として時雨」のドラマーであるピエール中野氏監修である有線ピヤホンなるものが好評で、以前、高価格帯の有線ピヤホン3を試聴したらかなりよかった。
低価格帯の有線ピヤホン1/有線ピヤホン2も人気が高いらしい。半信半疑であったが、実際に試してみると、今までの自分の中の常識があっけなく覆ってしまったのだ!?
他にも気になる同価格帯のイヤホンを購入し、聞き比べてみたのでレビューしたい。
アンダー4000円は品質がいい
低価格帯の製品は、大抵中国製が多い(他にインドネシアなどのアジア圏もある)。何十年も前の中国製品は、安いが品質が悪く、すぐに買い替える羽目になったが、このブログでよく紹介するHUAWEIを代表とする超有名企業が出てくるようになり、品質もかなり向上してきた(とは言っても、ブランドがないモグリの企業は未だ改善されていない模様)。
ブランドがない製品は責任逃れのためブランド表示していないのが常なのだが、ブランドを付している製品は、品質がよいと考えていいだろう。特に、日本企業が絡んでいるものだと、製品立ち上げ時から日本からの強力な指導が入るだけでなく、少しでも不具合が出てしまうと、すぐにフィードバックされるからだ。
未だに「中国製だから故障しやすい」と色眼鏡で見ている人でも、知らず知らずのうちに自ら中国製品を使っているケースが多い。これらのイヤホンを試してみて、考えを改め直してはいかがだろうか。
イヤホンスペック簡易一覧表
有線ピヤホン1 | 有線ピヤホン2 | Quarks | E1000 | EV-002 | |
---|---|---|---|---|---|
メーカー | アルペックス ハイユニット | アルペックス ハイユニット | 水月雨 | final | ダイソー |
ドライバー径 | Φ10 | Φ8 | Φ6 | ? | Φ10 |
再生周波数帯域 | 50~20000Hz | 5~40000Hz | 4~43000Hz | ? | 20~20000Hz |
インピーダンス | 16Ω | 16Ω | 16Ω | 16Ω | 16Ω |
出力音圧レベル | 96 | 92 | 116 | 102 | 104 |
イヤホン本体重量 (実測値) | 2.8g | 2.2g | 2.3g | 2.0g | 3.1g |
購入先 | e☆イヤホン | e☆イヤホン amazon | e☆イヤホン amazon | e☆イヤホン | お近くの ダイソー |
※再生周波数帯域は、メーカー公式発表のもの。有線ピヤホン2及びQuarksは上限が40kHz台となっているが、単にその周波数まで測定したというだけのものであり、他のイヤホンが優れていないということではないので要注意!
※出力音圧レベルは、メーカーによって測定方法が異なる。
※有線ピヤホン1で今回紹介した色(リスペクトブルー)は限定色につき完売。通常カラーのガンメタやピンク、販売店限定カラーは通常品として販売中とのこと。
イカす4000円以下のイヤホン
では、気になるイヤホン戦隊カナル4のメンバー(ピヤホン+比較対象)は次の通りだ。
アルペックスハイユニット 有線ピヤホン1
2017年に登場した「HSE-A1000」(税込1,320円)がベースとなったモデル。「凛として時雨」のドラマー ピエール中野氏が監修。ピエール中野氏自らが望むサウンドについて、渡航前、渡航後は中国の工場にてエンジニアとディスカッションし、試聴を重ねてチューニングを追い込んだという気合の入れよう。
低音域はタイトで力強く、なおかつ聴き疲れしない量感、高音域は耳に刺さる成分を抑えつつクリアな印象を実現している。ピエール中野氏が「この価格帯で究極と言えるバランス」と太鼓判を押すクォリティに仕上がったという。
周波数特性(実測)
メリット
デメリット
※2023.11.4変更 Hi-Unitマスダ様からの情報(ありがとうございました!):今回紹介した色(リスペクトブルー)は限定色につき完売。通常カラーのガンメタやピンク、販売店限定カラーは通常品として販売中とのこと。
アルペックスハイユニット 有線ピヤホン2
こちらも「凛として時雨」のドラマー ピエール中野氏が監修。聴き心地と音楽への没入感を進化させており、低音域はバスドラムとベースサウンドの生々しさが、高音域は澄みわたったクリアさが向上。「聴けば聴くほど心地よくなるイヤホン」を目指したという。
マイクも搭載されており、スマートフォンだけでなく、ゲーム、テレワークにも最適。派生機種として、コラボモデル(サンリオ・リトルツインスター、SEGA チュウニズム)などといったバリエーションもあり。
ゲームユーザーにも人気が高い。
周波数特性(実測)
メリット
デメリット
水月雨(すいげつあめ) Quarks
MOONDROPとも言われるこのメーカー。低価格帯だけでなく、ハイエンドの商品も扱っている。そのノウハウが低価格モデルにも生かされている。
第 2 世代の特許取得済み目詰まり防止フィルターが装備されており、耳垢の詰まりを防止している。ダブルダンピング構造を採用しており、特性が全く異なる 2つの素材を使用して中高域をフィルタリング。中高域の応答特性を滑らかにし、高音域のリンギングを大幅に排除しているという。
周波数特性(実測)
メリット
デメリット
final E1000
イヤホンメーカーとしては後発である日本企業。2007年から、スピーカーのOEMやODM事業を行っている実績もあり、音質に定評のあるメーカーの1つ。2009年からfinal audio designのブランドでイヤホンの販売を開始し、2014年にはブランド名をfinal audio designからfinalへと変更。
本機は、イヤーピースを左右に振ることができるスウィングフィット機構を搭載。耳道の傾きにジャストフィットできる。ちょっとしたことではあるが、音質が変わりやすいカナル型イヤホンには嬉しい機能。
周波数特性(実測)
メリット
デメリット
アンダー4000円共通のデメリット
若干弱弱しい所もある反面、実際に装着してみると、いずれの機種も収まりが耳介への収まりがよいことが分かる。
比較に300円イヤホンも投入!
実売1000円台~2000円台のイヤホンが勢揃いしたが、これでは面白くないので、300円イヤホンも登場させてみる。今回使用したのは、100円均ショップの雄ダイソーから発売されているものだ。
以前ダイソーから発売されていたものは音楽を聴けたものではなかったのだが、改善されてきており、一部のマニアがおもちゃ替わりに使っていると聞く。
そこまで凄いのなら、相手には申し分はないだろう。
ダイソー EV-002
いくつかラインナップがあるが、その中で低域・迫力に重きを置いているEV-002をチョイス。300円でありながら、マイク付き・アルミニウムハウジングなど、見た目は贅沢設計のようにも見える。
全国のダイソーで購入することができるお手軽さもあって、このシリーズも人気が高い。
周波数特性(実測)
メリット
デメリット
イヤホンが330円で、イヤーピースが合わなかった場合の出費を考えると、なんと計440円!価格破壊もいい所だ。イヤホン戦隊カナル4は、価格破壊王ダイソーに立ち向かえるのか…(続く)。このノリに付き合っておくれ。
Amazon Musicで試聴してみる
毎度お馴染みのAmazon Music Unlimitedでテストしてみる。イヤーピースはあえて付属のシリコンのものを使用(ダイソーは別売のもの)。イヤーピースによって、評価は変わるかも知れないので、その旨ご留意いただきたい。
試聴の際、イヤホンの挿入に関しては、できる限り低域が出るようしっかり耳孔にフィットさせているのは言うまでもない。
水樹奈々 スパイラル【HD(16bit/44.1kHz)】
まずは、ダイソーEV-002で試聴。低域寄りらしいが、どちらかというと高音域がきらびやか。それにしても、これで300円なのかと、軽い衝撃を覚えた。しかし、カナル4も負けてはいない。一番好印象なのは有線ピヤホン2で、分離もよく、ボーカルもさることながらドラムの音が心地いい。
有線ピヤホン1は、有線ピヤホン2とは方向性が異なり、特に高音域が非常にクリア。低域は、有線ピヤホン2を少し控えめにした印象を受けた。
有線ピヤホンシリーズは楽器のレスポンスがよいが、Quarksは、特に尖った所がなく、全体的にマイルドな感じ。E1000もQuarksほどではないが、どちらかというとマイルドな感じを受けた。
高価格のイヤホンと比べると、足元に及ばないが、値段を考えると全機種大健闘だ。しかし、ダイソーEV-002は、きらびやか過ぎるので、聞き疲れしてしまいそうな印象も受けた。
岡崎体育 深夜高速【Ultra HD(24bit/96kHz)】
この曲は楽器演奏でディストーションバリバリな箇所がある。高音域がきらびやかなダイソーEV-002では、何だか耳に深く突き刺さりそうという印象。あまり長く聞いていられない。
しかし、この突き刺さりそうな感じが好きな人からすると、子供のお駄賃程度で買えるので、たまらないアイテムなのかも知れない。
安心して聞けそうなのが、カナル4ことアンダー4000円の4機種。その中で、微妙な差で有線ピヤホン2が好印象。とは言え、有線ピヤホン1もよかったし、スパイラルではマイルドな感じがしたE1000も荒々しい曲では本領発揮といった所か。
E1000は、ソースによって表情を変えるのかも。それはそれで面白い個性だ。
Quarksは、この荒々しい曲でもマイルドにしてしまった。何だか不思議な感じ。どのようなものに掛けても同じ味に変えてしまうという強力なスパイスという表現が合っているかも知れない。
新時代 Ado【ドルビーアトモス】
Adoの曲で試してみる。高音域がきらびやかなダイソーEV-002では、意外や意外。この曲は楽器の数が少ないのもあって、それなりに聞けるではないか。他の曲の様に楽器の音が複雑に絡み合っているのはどうも苦手みたいだ。
こちらでも有線ピヤホン2が好印象。有線ピヤホン1/E1000/Quarksで聞いてもいい。ドルビーアトモスの威力だからか!? 不思議に思って、Ultra HD(24Bit/48kHz)にチェンジ。ドルビーアトモスと比べ、音の広がり感は抑えられるも結果は一緒。
この曲を聞いていて、過去にイマイチと思ったイヤホンが1個あったものの、今回のイヤホンは全てよい感じに聞こえてしまう。ソースがよいという証なのかも。
BTS Butter【ドルビーアスモス】
高音域がきらびやかなダイソーEV-002では、意外や意外。この曲もそれなりに聞けるではないか。それもそのはず。Butterも楽器の数が少ないのだ。ドルビーアトモスの力を使うと、更によくなる。
唯一、音のバランスがよかったのは、有線ピヤホン2。それに逼迫しているのが、意外や意外。今までマイルドと評していたQuarksなのだ。
有線ピヤホン1とE1000はどちらかというと、高音域寄りだろうか。でも悪い感じはしない。
Quarksは、マイルドという表現をしているが、単にぼんやりした音ということではなく、嫌味がない個性のように捉えている。Φ6のダイナミックドライバーなので、高音寄りと思っていたが、曲によっては様子が変化している。
イヤホンって、つくづく面白い。
周波数特性データから解析
有線ピヤホン1は高域寄り
試聴していて有線ピヤホン1は有線ピヤホン2よりも高域寄りと感じたが、やはり高域のレベルが高かった。有線ピヤホン2は、低域を若干上げ目にし、かつ高域若干抑えた格好だ。楽器の音が映えるようなチューニングなのだろう。
QuarksとE1000のマイルドさは特性に出ていた!
有線ピヤホン2、Quarks、E1000のデータを極力近づけたグラフだ。有線ピヤホン2はいやゆるドンシャリに近づけているのに対し、Quarks、E1000は若干高域が持ち上がっているもののフラットに近い特性と言える。
この辺りが、マイルドな感じに聞こえた要因ではないか。
謎!? 有線ピヤホン2とEV-002の特性が類似
驚いたことに、有線ピヤホン2とEV-002の特性が非常に似通った特性になっている。それにも関わらず、試聴すると全くキャラクターの異なる感じに聞こえた。
恐らく、ドライバーや構成する部品の差が出ているのだろう。有線ピヤホンはΦ8mmダイナミックドライバーで振動板にグラフェンコーティング+ピエール中野の熱血チューニングを使用。対するEV-002はΦ10mmのダイナミックドライバーを使用。
細かい部品の差が大違いなのだろう。もう一歩で有線ピヤホン2並になっていたのでは??と考えると、ダイソーの300円イヤホンの今後が楽しみだ。
イヤホン戦隊カナル4が本領発揮
今回は、アンダー4000円イヤホンの対決をしてみたが、ダイソーのイヤホンも意外と悪くなかった。しかし、聞き込んでいくと、イヤホン戦隊カナル4が本領発揮!? やはり価格差があるよねと納得。
その中でも、有線ピヤホン2は、その後に発売される有線ピヤホン3の布石だったのではないかという位に音の方向性が似ている。気になって周波数特性のグラフをトレースしてみると、異なる部分はあれど、確かに片鱗はありそうな感じに見受けられた。
聞き比べれば、有線ピヤホン3の圧勝であるのは間違いないのだが、聞き比べしなければ、人によっては、これでいいんじゃない?と思ってしまうほどのよいできなのだ(メーカーさんとしては、高価格モデルにステップアップしたもらいたいと思うのだろうけれど)。
他の3つはダメなのかというと、全くそういうことはなく、それぞれのキャラクターを持っており、それに嵌る人にはたまらない愛機となるのだろうなぁ…と感じている。今回の4つは、個性的ではあるものの、どれを選んでも失敗がないと言える。
1万円以上もするイヤホンは、使っているものが違うので音がよくなるのは当然であるが、イヤホンのエントリー機種としてはアンダー4000円は最適だ。記事を参考に是非オンリーワンを選んでほしい。
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